人口減少・高齢化・インフラ維持など、日本の先行課題が集積する北海道。電力という社会基盤を70年以上近く支えてきた北海道電力は、2023年11月に「事業共創推進室」を立ち上げ、非エネルギー領域での事業創出に踏み出しました。
本記事では、北海道電力株式会社 事業共創推進室 主任の佐々木一磨さんに、JOYCLEへの出資を決めた背景、見学会や対話を通じて得られた示唆、ハンズオン支援の考え方、そして“電気×分散型インフラ(地域ごとに導入できる移動可能なインフラ)”で描く北海道の未来について、代表・小柳裕太郎がインタビューしました。
事業共創推進室の誕生――「地域インパクトを最優先に」
小柳:まず、北海道電力さんの新組織「事業共創推進室」について教えてください。
佐々木:2023年11月に発足した新組織で、非エネルギー領域の事業開発を担います。私たちの最優先ミッションは“北海道の社会課題やポテンシャルに資する事業”をつくること。本業である電力インフラを堅持しつつ、地域の衰退リスクに正面から向き合い、自治体との日常的な関係性を活かして、課題抽出から実装までを繋いでいきます。

「CVC的な視点に閉じず、地域インパクトを軸に出資・協業を判断する」――ここが新組織のコアです。(佐々木)
なぜJOYCLEだったのか――“親和性”と“実装ルート”の明確さ
小柳:数ある選択肢の中で、出資判断が早かったと伺いました。決め手は?
佐々木:北海道の社会課題、とくにごみ処理の深刻化とJOYCLEのビジョンの親和性が明確でした。自治体ヒアリングを重ねるほど、人材不足、焼却炉の維持、委託費高騰といった課題が具体化する。生活の基盤を守る重要インフラという点で、電力事業に“近接”していることも大きかった。
さらに、分散型インフラ×電気という将来像、災害時のレジリエンス強化など、本業との連携イメージが描けました。VCや他社の関心の高さから、市場性と社会的インパクトの両立可能性も確認でき、社内合意形成はスムーズでした。
見学会で高まった解像度――横断的な対話がもたらしたもの
小柳:見学会や懇親会にも参加いただきました。印象は?
佐々木:とても有意義でした。道外の自治体・企業・VCが同じテーブルで語ることで、課題の俯瞰と解像度が一気に上がりました。投資家が何を重視するか、他地域での解決アプローチは何かを学び、北海道でインパクトを最大化する展開モデルや連携スキームのヒントを得ることができました。

ハンズオン支援の流儀――「過干渉せず、対話で前に進める」
小柳:連携後の“距離感”も絶妙で、とても助かっています。
佐々木:ありがとうございます。私たちは出資後も能動的に支援しますが、過干渉はしません。対話を重視し、北海道内のネットワークと実務リソースを活かして、関係者を巻き込みながら前例をつくる。支援と自律のバランスを大切にしています。
佐々木さん個人の原体験――“前例をつくる時期”に挑む
小柳:佐々木さんご自身のモチベーションも聞かせてください。
佐々木:配電部門で10年以上現場を経験してきました。停電対応、設備管理――現場で培った実感が、地域インフラのリアリティを支えています。いまは新組織の立ち上げ期。「前例をつくる時期」にあるからこそ、スタートアップと丁寧に価値観を擦り合わせ、社内外の信頼と“型”を築いていきたいと思っています。まだ歴は浅いですが、だからこそ誠実にやり抜く覚悟です。
共創で描く北海道の未来――“電気×分散型インフラ”がつくる新しい公共
小柳:JOYCLEと一緒に、どんな未来を?
佐々木:分散型インフラ×電気の組み合わせで、新しい公共サービス像をつくりたいです。平時はオンサイト資源化、有事は電源確保と機動展開でレジリエンスを高める。既存の電力インフラを活用しつつ、新インフラの再設計・再構築に挑みたいと思います。許認可など制度面の整理を進め、自治体連携を基軸に段階的な実装へ。スケールに耐える運用・制度設計を共創していきたいです。
合意した“次の一手”――実装に向けた方向性
JOYCLEと北海道電力は、今後も自治体との連携を基軸に、制度面の課題整理や実証のテーマ設定を進めていきます。特に災害対応やレジリエンス強化といったユースケースに焦点を当て、現場と行政、企業が一体となって「実装に耐える制度・運用」を形にしていくことを共通認識としています。
未来を共に創る投資家へ――信頼できる人と実装力を強みに
小柳:最後に、投資を検討する方への一言をお願いします。
佐々木:まずは小柳さんの人柄と熱量を感じてほしいです。謙虚で、出会いを大切にしながら実行するリーダーです。そして、メンバーの結束と価値観の一貫性が、プロダクトとビジョンを力強く牽引しています。
地域課題への適合性に加え、自治体・インフラ連携という実務的な実装ルートが見えているのも強みです。社会的インパクトと事業性の両立に、現実的な手触り感があります。
“地域インパクト”を合言葉に
事業共創推進室が掲げるのは、単なる新規事業ではありません。地域インパクトを軸に、北海道の未来を更新することです。電力という大動脈と、JOYCLEの分散型インフラが交わるとき、平時・有事の両面で持続可能性は一段深まります。
「前例をつくる今この瞬間」に、私たちはいます。現場と制度、企業と自治体、投資家と市民。多様なステークホルダーを結ぶ結節点で、JOYCLEと北海道電力は次の一歩を踏み出します。

「北海道の課題解決に資する仕組みを、関係者と共につくりあげていく。そこに電力会社としての責任と価値があると思っています」(佐々木)
